Apple がどうしても中国と相容れない理由2週間後には北京オリンピックが始まる。しかし、Apple の北京での戦いは既に始まっている。同社は7月19日、新しいピカピカの Apple ストアを北京にオープンさせた。Apple 関係者によると、中国には Apple ストアを「今後続々」オープンさせていくという。レースは始まっているのだ。
しかし、Apple はこの競技で勝てるのだろうか? 中国は魅力的な市場だ。しかし、今のところ進展はあまり順調でないようだ。Apple は中国におけるメディアプレーヤーのマーケットシェアが8%未満で、PC や携帯電話のマーケットシェアは1%を大きく下回る。 Apple は「iPhone」を70か国以上で成功裏に発売したが、中国はそこに含まれていない。同社はまだ、中国のどのキャリアとも合意に達していない。 Apple が中国で2番目に大きな成功を収めているのが iPhone だが、これは正規のものではない。中国のあるアナリストの予測によると、100万台前後の Apple iPhone が現在わずか1社のキャリア(China Mobile)で集中的に利用されており、そのほかのキャリアでの利用台数はごくわずかだという。 中国にある Apple の「正規販売代理店」の大半は闇 iPhone を販売しており、その多くは不法のクラッキングサービスまで提供している。その手続きは、カリフォルニアで iPhone 3G をアクティベートするより短時間で完了するとされている。 Apple が iPhones を中国で合法的に販売しようと悪戦苦闘しているのは問題のごく一部に過ぎない。中国と Apple は、以下のような理由からどうしても相容れないのだ。 ■Apple は大衆市場の高級ブランド 安価で大量に販売される大量生産型の電子機器は中国でよく売れ、少量の高級ブランドも北京と上海でよく売れる。しかし、Apple 製品は3つ目の「大量生産の高級製品」カテゴリーに分類されるのだ。 Apple 製品の大半は中国では高価すぎる。たとえば、新しく開店した Apple ストアで販売される2.4 GHz 版 Intel Core Duo を搭載した「MacBook」の価格は、中国都市部の平均的サラリーマンの年収とほぼ同額である2,000ドルとなっている。 しかし、価格だけの話ではない。Apple が成功するのは、顧客がその製品とブランドにほれ込むからだ。しか中国では、ブランドはほとんどの見込み客にとってほとんど意味をなさず、ハードウェアに対する関心度はさらに低い。中国の消費者は何よりも価格を重んじるのだ。 他の国々では Apple ブランドが大事にされているため、同社は世界中のキャリアから有利な条件を引き出すことができた。しかし、それも中国ではほとんど役に立たない。報道によると、Apple は当初、魅力的な独占契約の見返りとして携帯電話関連売上高の数十%をキャリアに要求したという(ある会社によると Apple は30%を要求したという)。Apple が中国の消費者に浸透することの価値と、Apple ブランドの価値に対する中国キャリアの感動は釣り合わないようだ。どうやら、彼らは Apple が要求した収益分配率の引き下げを同社に余儀なくさせたようだ。 ■中国政府の独裁主義 中国は一党独裁であり、それが実際に製品の品質に影響を与えている。Apple が中国共産党の厳しいインターネット規制/検閲規則に準拠するには iPhone の Wi-Fi 機能を使用不可にせざるを得ないだろう、というのもその一例だ。 ■中国語版 iTunes の不在 詳細は明らかにされていないが、何らかの理由から Apple は中国語版 iTunes を提供していない。その理由は、中国における音楽著作権侵害の蔓延に対する音楽レーベル各社の懸念と何らかの関係があるものと思われる。とにかく、Apple は、その価値の「もう半分」を占めるミュージックストアを用意できない市場で iPod を販売しており、もうすぐ iPhones も発売しようとしているのだ。 さらに、悪いことに、China Mobile は盛況な音楽ダウンロードビジネスを展開している。中国は、iPhone で聴く楽曲を Apple ではなくキャリアが販売する初めての国になるかもしれない ■中国の知的財産盗難事件数は最悪 全体的に、Apple のビジネスモデルは洗練されたデザイン、優れたブランド戦略、そしてクリエイティブな知的財産(IP)の販売を通じて価値を創造し、IP の盗難、著作権侵害、そして偽造から権利を守ることが基盤となっている。 中国が知的財産法を執行しない場合、どうすればこのやり方が成功するというのだろう? 中国における音楽の著作権侵害率は、調査元にもよるが90〜99%に達する。全般的に見て、中国は知的財産の盗難全般および Apple 保有の IP の盗難に関して世界の中心となっている。特に狙われているのが iPhone と iPod なのだ。 偽 iPhone や、Apple のブランドを盗んだ携帯電話、サービスをアンロックした不法 iPhone、不法コピー映画や音楽ファイルは、どれも中国では黙認され、政府が保護にまで乗りだしているように思える。 共産党から独立していない中国の裁判所は、大体の場合、IP を盗み出している中国企業に圧力を加えようとする外国企業に敵対的な態度を示す。中国政府は従来、国内における IP の盗難を双方にとってメリットのあるものだと考えていた。中国のノウハウと中国の製造業を同時に築き上げる一方で、外国の競合各社にはダメージを与えるという付加利益があるのだ。 中国政府は昨年、一部の偽造活動を厳しく取り締まった。しかし、この方針転換は北京オリンピック前に自国の評判を改善する幅広い取り組みの一環かもしれない。北京でオリンピックが終了し、世界の目がほかに向けられたときに何が起こるのかはまだ分からない。 中国のキャリア各社は Apple の収益分配条件が気に入らず、中国の大半の顧客は Apple の価格に不満を抱き、Apple がプレミアムブランドであろうとなかろうと関心がない。 また、Apple は中国の顧客に提供する「Appleのエクスペリエンス」に関して妥協を迫られている。iPhone には、おそらく iTunes も Wi-Fi も搭載されないだろう。 確かに、Apple は中国でのビジネスが必要だし、いずれは展開していくことになるだろう。しかし、同社がオープンさせたピカピカの新しい Apple ストアの背景には、Apple のような会社が中国のような国でビジネスを展開する際の非常に繁雑な現実が隠れているのだ。 |